貫井囃子では篠笛が使われており、笛の太さ、
長さは吹き手の体格や技術の程度によって大体
決められますが、一般的には三本調子から五本
調子のものが使われます。

 それぞれの曲目について笛の基本的な文句は
決まっていますが、吹き手の年齢や経験度あるいは吹く人の性格や感性がプラスされることによって、
一つ一つの文句についての節まわし、また音色等に吹き手一人一人の特徴が現れてきます。

 笛の役割は、全曲においての曲の始まりと終わりを合図したり、音色の強弱を決めたりするなど、
つねに他の四つの楽器をリードすることです。そしてこのことに関連して、とりわけ貫井囃子で重視されることは、メリハリをつけて吹くことです。それは単に 音の強弱だけでなく、音を切るところは切る、長く
延ばすところはとことん粘るということです。このようなことが前述した吹き手一人一人の特徴と合わさって──たとえば若者の力強く歯切れは良いがぶっきらぼうな笛が年齢や経験を経ることによって、良い意味で枯れた味のある笛となっていくのです。

 唯一、笛を聞かせる曲である鎌倉や、笛の文句を聞いたままに太鼓が玉入れをする仕丁目では、
特にそのような吹き手一人一人の特徴が顕著に
現れてきて、吹き手によって囃子全体の雰囲気が
変化します。




















 貫井囃子の太鼓は、頭(かしら)、しり、大胴の
三つのものから構成されています。太鼓の位置は
真ん中に頭、むかって左側に大胴、右側にしりと
なっています。

 楽器全体では笛が中心となっていますが、太鼓では頭が中心であるため、基本となる決まり文句を
叩き、そのあいだにしりが叩いていきます。大胴は
しりと同じ間(ま)ではありますが、しりよりバチ数を減らし、良い間を狙って叩いていきます。しかし、
大胴が頭としりをリードしていく曲もあります。

 貫井囃子の太鼓の特徴は、つけ太鼓では頭が
高音、しりが低音となっており、大胴は葛西、神田流系統に比べ音が高く、三多摩地方のものに比べると音が低く遠音がさすというのが特徴です。三つの
太鼓の音を言葉で表現すると、頭がテン、しりがトン、大胴がドンというようになっており、この三種の
音がバランスよく調和されています。



太鼓















鉦(かね)





 この楽器は「すりがね」とも呼ばれ、別名「四助(よすけ)」とも言われます。これは笛、頭、しり、大胴の四つの楽器を助けるという説と、四助という飴屋が鉦を鳴らし、他の四つの楽器しかなかった囃子に
飛び入りで鉦を加えたからという説が伝えられて
いますが、前者は貫井囃子においての鉦の在り方を端的に説明しているといえます。

 全体の配置のなかでは、正面に向かって左後方に位置し、胸の前に持った鉦を上下左右に振り、からだ全体でリズムをとりながら演奏します。また、鉦の裏側を二本または三本の指で押さえたり離したりしながら、竹または鯨のヒゲの先に鹿角を付けた棒で叩きます。
 さらに鉦の裏側を含めた全面を手首や棒のしなりを利かせて叩いたり刻んだりすることによって変化のある音を奏で、また全体の楽器のなかでは唯一の金属楽器ということもあり、異質な音色を出し、
隠し味ともなっています。

 それゆえに、他の楽器の音を害する大きな音にも全体的に物足りなさを感じさせるほど小さな音にも
なってはいけません。そして、四つの楽器の足りない部分を補い、さらにそれらをそれ以上に盛り上げ、全体としては他の四つの音にバランス良く加わらなければならないという点において難しい楽器であり、他の楽器同様に重要なものであります。基本的には頭の文句にそって鉦を入れていますが、以上説明した条件のもとでかなり自由に、また個人の特徴がでるような自由な文句を入れることができます。













拍子木
 間(ま)は大胴と同じように取ります。拍子木はあまり目立たない楽器でやる人も少ないですが、実はリズムを取るのに最も適した楽器です。
 単純なように見えますが、とても奥が深く、きれいな間で叩くことが難しい楽器です。笛や太鼓に自信が ある人も拍子木をやると、なかなか合わないと思います。
























桶胴(おけどう)


 桶胴は太鼓を立って叩く形態です。
 貫井囃子保存会では、桶胴太鼓(写真右から2人目)と小締太鼓(写真右から5人目)を組み合わせた太鼓のほか、笛と鉦の四人で構成されます。小締太鼓が
太鼓の頭、桶胴太鼓がしりと大胴の役割をします。

 移動しながら叩くことができるので、提灯や金棒等とともに行列の体系をとって、お花見で練り歩いたり、
結婚式の入場などに用います。